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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

TEL 086-255-1155

岡山県岡山市北区津高781番地 妙霑寺内

観世音菩薩

その時、無尽意菩薩(むじんにぼさつ)が立ち上がり、右の肩をあらわにして合掌して仏にたずねた。
「どんな因縁があって、観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)と呼ばれれるのでしょうか」
仏は、無尽意菩薩に告げた。
「無量百千万億の衆生がいて、いろいろな苦悩を受けても、観世音菩薩の名を一心に唱えると、すぐさま声を聞きつけて苦悩から救ってくれる。
火災に遭っても焼けることなく、洪水を受けてもすぐに浅い所にたどり着く。
七宝を求めて大海に出て暴風を受けて羅刹や鬼の国に漂着しても、一人でも観世音菩薩の名を唱えると危害を加えられることはできない。
刀で切られ杖で叩かれようとしても、観世音菩薩の名を唱えると刀や杖はバラバラに折れてしまう。
三千大千国土に充満する夜叉や羅刹が襲ってきても、観世音菩薩の名を唱えると彼らの目が見えなくなって危害を加えることができない。
罪の有る無しにかかわらず、手かせ足かせなどで拘束されても、観世音菩薩の名を唱えると、すぐにそれは壊れて自由になれる。
盗賊に襲われても、観世音菩薩の名を唱えると、傷を負うことなく逃れさせてくれる。
性欲が強すぎても、観世音菩薩を敬えば性欲から離れることができる。
さらに貪・瞋・痴(とん・じん・ち)の三惑(さんわく)に悩まされているなら、常に観世音菩薩に供養すれば、たちまち離れることができる。
また女性が観世音菩薩を礼拝し供養すれば、福徳があり頭のよい男の子や、だれもに好かれる女の子に恵まれる。
六十二億恒河沙の菩薩に供養をつくすのと、観世音菩薩の名を唱えほんの一時供養するのとでは、同じ功徳がある。
無尽意菩薩よ。観世音菩薩の力は、これほどにすばらしいものなのだ」
無尽意菩薩が言った。
「観世音菩薩はどのようにしてこの娑婆世界に遊行し、法を説くのでしょうか」
「衆生の中でも、子供の姿のまま悟りを得て仏になれる者のためには、子供の姿で法を説くといったように、観世音菩薩は三十三種類の形に変化していろいろな国土に遊行し、衆生を教化する。
そして衆生が危険に遭遇しても恐れを無くさせる力を持つ。
だから娑婆世界の者は、みな彼のことを『施無畏者(せむいしゃ)』とも呼んでいるのだ」
これを聞いた無尽意菩薩は、首にかけていた宝石をはずし、観世音菩薩に布施した。
観世音菩薩は始めは受け取らなかったが、仏が
「衆生を愍むために受け取りなさい」
と言ったので、それを受け取り、二つに分け、釈尊と多宝如来に捧げたのだった。
その時に、無尽意菩薩は、偈をもって言った。
「何の因縁があって観世音菩薩と名付けるのか、その功徳を説く。
殺害してやろうと大火坑に突き落とされても観音の力を念ずると火坑は池に変ずる。
海で嵐に遭っても観音の力を念ずると海に沈むことはない。
須弥山の頂上にいて突き落とされても観音の力を念ずると太陽のように虚空に浮かぶ。
悪人に追われて金剛山から落ちても観音の力を念ずると全くケガをしない。
盗賊に襲われて刀で切られようとしても観音の力を念ずると盗賊に慈悲の心が生じて切ることができない。
王に捕らえられ処刑されようとしても観音の力を念ずると刀が段々に折れてしまう。
手かせ足かせを付けられても観音の力を念ずると手かせ足かせは壊れてしまう。
毒薬をもって殺されようとしても観音の力を念ずると還って殺そうとする者に毒薬がついてしまう。
羅刹・毒龍に遇っても観音の力を念ずると害することができなくなる。
悪獣に囲まれて牙や爪にかかろうとしても観音の力を念ずるとたちまちに逃げて行ってしまう。
蛇やサソリに襲われても観音の力を念ずると去ってしまう。
雷や雹(ひょう)に襲われても観音の力を念ずるとすぐに消えてしまう。
衆生が困難に遭って苦しんでいることを観世音菩薩はよくこれを救うのである。
観世音菩薩は神通力を有しあらゆる所にたちまちに現れるのである。
地獄や生老病死の苦しみをことごとく滅し、慈悲深く、清らかな光で闇を破り、災いを抑えて遍ねく世間を照らすのである。
その故に観世音菩薩に帰依すべきである。
その時に、持地菩薩が座より起って仏に言った。
「世尊よ、この観世音菩薩品の自在の業や普門示現の神通力を聞いた者の功徳は計り知れない」
仏が、この普門品を説いたとき、衆生は皆最高の悟りの心となった。

【解説】
妙法蓮華経観世音菩薩普門品第25は、観世音菩薩が救済する章となっているが、妙法蓮華経の中では、一連の流れに乗っておらず関連性は薄く、元々は別の経典「観音経」だったとする説がある。
「普門」とは、「あまねくゆきわたっている門戸」という意味であり、観世音菩薩が衆生を救済するのに、衆生の機根(性格や仏の教えを聞ける器)に応じて、33種類の形体を現じることを「普門示現(ふもんじげん)」というところからきている。
三十三身の種類
(1)仏身(ぶっしん)
(2)辟支仏身(びゃくしぶつしん)
(3)声聞身(しょうもんしん)
(4)大梵王身(だいぼんおうしん)
(5)帝釈身(たいしゃくしん)
(6)自在天身(じざいてんしん)
(7)大自在天身(だいじざいてんしん)
(8)天大将軍身(てんだいしょうぐんしん)
(9)毘沙門身(びしゃもんしん)
(10)小王身(しょうおうしん)
(11)長者身(ちょうじゃしん)
(12)居士身(こじしん)
(13)宰官身(さいかんしん)
(14)婆羅門身(ばらもんしん)
(15)比丘身(びくしん)
(16)比丘尼身(びくにしん)
(17)優婆塞身(うばそくしん)
(18)優婆夷身(うばいしん)
(19)人身(じんしん)
(20)非人身(ひじんしん)
(21)婦女身(ふじょしん)
(22)童目天女身(どうもくてんにょしん)
(23)童男身(どうなんしん)
(24)童女身(どうにょしん)
(25)天身(てんしん)
(26)龍身(りゅうしん)
(27)夜叉身(やしゃしん)
(28)乾闥婆身(けんだつばしん)
(29)阿修羅身(あしゅらしん)
(30)迦樓羅身(かるらしん)
(31)緊那羅身(きんならしん)
(32)摩羅迦身(まごらかしん)
(33)執金剛身(しゅうこんごうしん)
観世音菩薩普門品は、具体的な現世利益を説いた内容となっており、ある意味で仏教説話といえる。
御義口伝(就註法華経口伝下)に、
「観音は即ち法華の体なり。所謂南無妙法蓮華経の体なり」 とあるとおり、この経典の中で観世音菩薩の名を唱えることは、末法においては南無妙法蓮華経と唱えることである。


 
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