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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

TEL 086-255-1155

岡山県岡山市北区津高781番地 妙霑寺内

口は禍いのもと

その時、世尊は阿難と共に王舎城に入り乞食が終わって城を出られた時のことである。
城門の外に人々が大小便を捨てるための大きな深い穴があって、雨水や汚水が流れ込んでいた。
その中に人間の形に似て多くの手足を持った一匹の虫がいた。
はるかに如来が来られるのを見て、水中から頭を出して、目にいっぱい涙をためて仰ぎ見た。
如来が、この様子をご覧になって、哀れみのまなざしで悲しそうな樣子であった。

やがて如来は霊鷲山に帰られ、阿難が用意した敷物の上に座られた。
その時、阿難は皆が疑問に思っていることについて尋ねた。
「世尊よ、さきほど王舎城外で便所の水の中の小虫をご覧になりましたが、あれは前世にどんな悪業を作ったのでしょうか。いつからあんな汚い水の中に生まれたのでしょう。また、いつになったら、あの苦しみから逃れることができるのでありましょうか」
「阿難及び諸大衆よ、お前たちのため説くので、よく聞くがよい。
無量千劫の昔、仏が出現され、生きとし生けるすべてのものを教化し終わって、入滅された後のことである。
その像法時代に、一人のバラモンがあって、寺を建てて多くの僧に供養した。
檀家の一人からも、たくさんの乳製品の供養があった。
時に多くの客僧がこの寺を訪れたが、この寺の維那(いな:世話役僧)は瞋恚(しんに:怒りの心)の心を生じ、多くの客僧が来ることを嫌った。
「せっかく檀家からたくさん供養されたのに、いらざる人たちが来て、借しいことだ。いっそ隠しておこう」
維那は例の乳製品を隠して客僧たちの食膳に添えなかった。
客僧たちはかねてこのことを知っていたので、このことについて維那を責めた。
「なぜ、乳製品をわたしどもにくれないのか」
「お前たちは客で、わしは古くから住んでいる僧だ」
「乳製品は檀家のご供養ではないか。現に寺にあるものには、誰かれの区別なく施すべきものではないか」
その時、維那は凶悪になって、
「お前たちは便所の水を飲むがよい。乳製品はわしの物だ」と言ってしまった。
 仏は言われた。
「悪口を言った悪の報いとして、それから後、90億劫もの長い間、彼は便所の水の中に生まれたのだ。彼はたった一度、多くの客僧に悪口を言ったばかりに、この苦しみを受けたのである」

仏は、諸弟子に告げた。
「口は禍いのもと、この身を焼く猛火だと知るべきである。父母や衆僧に対しては、常に賛嘆し優しい言葉をかけ恩に報いるべきである。衆僧は三界の福田(ふくでん)であり、父母は最勝の福田である。
衆僧の中には成仏を約束された者もいる。父母は十ヶ月間抱き、乳を飲まし、教育を施し、その出家・修養・解脱を助けて生死の海を渡らせる。
仏は阿難に告げた。
「父母・衆僧は、これ一切衆生の福田である。いわゆる涅槃・解脱・得成の妙因である」
仏が、この経を説いたとき、無量百千の衆生たちは、初果から四果を得、阿耨多羅三藐三菩提・声聞・縁覚の心を発し、それぞれ合掌し、歓喜して帰って行った。
大方便仏報恩経巻三 論義品第五

【解説】
 大方便仏報恩経は、大正新脩大藏經で本縁部に属している。訳者は不詳で、後漢録に出ている。この経典は、七巻九品からなり、略して報恩経ともいう。
九品は次のとおりである。
 序品 第一
 孝養品 第二
 対治品 第三
 發菩提心品 第四
 論義品 第五
 悪友品 第六
 慈品 第七
 優波離品 第八
 親近品 第九
なお、この経典に出てくる乳製品とは、「酥油(そゆ)」と記し、バターに似たものである。


 
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