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日興上人御申状

【解説】
 この申し状は、日興上人が85歳の時、内乱が続く衰亡期の鎌倉幕府の執権北条守時に与えられたもので、このあと3年にして北条氏は悲惨な滅亡を遂げました。

原文(漢文)

日興上人御申状
 日蓮聖人弟子日興重言上
 早対治爾前迹門謗法被立法華本門正法者可為天下泰平国土安全事
副進先師申状等
 一巻 立正安国論文応元年勘文
 一通 文永五年申状
 一通 同八年申状
 一 所造書籍等
右度々具言上畢抑対治謗法弘通正法治国之秘術聖代之佳例也所謂漢土則隋皇帝天台大師破十師邪義治乱国倭国亦桓武天皇伝教大師止六宗之謗法退異賊凡付内付外捨悪持善如来金言明王善政也爰近代天地災難国土衰乱逐歳強盛也然則当世御帰依仏法為世為人無益事誰可論之哉凡伝教大師像法所弘法華者迹門也日蓮聖人末法弘通之法華者本門也是即如来付嘱次第也大師解釈明証也為仏法為王法早被尋聞食急可有御沙汰者歟所詮入末法不被建法華本門之間国土災難随日増長自他叛逆逐歳蜂起是等子細具先師所造安国論並書籍等勘申所皆以符合然則早対治爾前迹門之謗法被立法華本門之正法者可為天下泰平国土安全仍為世為法重言上如件
 元徳二年三月        日興

原文(書下し文)

日興上人申状
 日蓮聖人の弟子日興重ねて言上
 早く爾前迹門の謗法を対治し、法華本門の正法を立てらるれば、天下泰平国土安全たるべき事。
 副え進ず、先師申状等
 一巻 立正安国論 文応元年の勘文
 一通 文永五年の申状
 一通 同八年の申状
 一、 所造の書籍等
 右、度度具さに言上し畢んぬ。
 抑(そもそも)謗法を対治し正法を弘通するは、治国の秘術聖代の佳例なり。所謂漢土には則ち隋の皇帝、天台大師十師の邪義を破して乱国を治す。倭国には亦桓武天皇、伝教大師六宗の謗法を止めて異賊を退く。凡そ内に付け外に付け、悪を捨て善を持つは如来の金言、明王の善政なり。


 爰に近代天地の災難国土の衰乱、歳を逐うて強盛なり。然れば則ち当世御帰依の仏法は、世のため人のため無益なること誰か之れを論ずベけんや。

 凡そ伝教大師像法所弘の法華は迹門なり、日蓮聖人末法弘通の法華は本門なり、是れ即ち如来付嘱の次第なり、大師の解釈明証なり、

 仏法のため王法のため、早く尋ね聞こし食(め)され、急ぎ御沙汰あるべきものか。

 所詮末法に入っては、法華本門を建てられざるの間は、国土の災難日に随って増長し、自他の叛逆歳を逐うて蜂起せん。是等の子細具(つぶ)さに先師所造の安国論並びに書籍等に勘え申すところ皆以って符合せり。
 然れば則ち早く爾前迹門の謗法を対治し、法華本門の正法を立てらるれば、天下泰平国土安全たるべし。仍って世のため法のため重ねて言上件(くだん)の如し。
  元徳二年三月   日興
 

現代文

日興上人申状
 日蓮大聖人の弟子である日興が再び言上申しあげます。
 すみやかに、爾前迹門の謗法を対治し、法華本門の正法を立てるならば、世の中は穏やかに治まり、国土は安らかになります。
 先師・日蓮大聖人の申状等を副え奉ります。
 一巻 立正安国論 文応元年に記した勘文
 一通 文永5年の申状
 一通 同じく8年の申状
 一つ 述作した書物等
 右は、たびたび詳細に申しあげてきたことです。
 もともと謗法を対治して正法を弘通することは、国を治める秘術であり、聖天子が統治されためでたい先例です。中国には隋の皇帝のもとで、天台大師は南三北七の十師の邪義を破折して、国の乱れを治めました。日本ではまた桓武天皇のもとで、伝教大師が南都六宗の謗法を止めて、他国の賊を退けました。およそ、仏法であってもそれ以外の事柄についても、悪を捨てて善を持つことは如来の金言であり、賢明な君主が行なう善き政治です。
 ところが、近ごろの天地の災難や国土の衰え・乱れは、年を経るごとにいよいよ酷くなっています。そうであれば、世を治める人々が現在にご帰依されている仏法は、世の中のためにも、また人々のためにも無益であることは、今さら誰がこれを論ずる必要がありましょうか。
 伝教大師が像法時代に弘めた法華経は迹門の教えです。日蓮大聖人が末法に弘通する法華経は本門の教えです。これは、釈尊の付嘱の順序であり、伝教大師の解釈にも明らかに証明されているところです。
 仏法のため、王法のため、一刻も早く物事の道理を問いただされ、すみやかに裁断を下すべきなのです。
 結局、末法に入って法華本門の教えを立てない間は、国土の災難は日ごとに甚だしくなり、自他の叛逆は年を経るごとに蜂起することでしょう。これらの子細については、詳しく先師日蓮大聖人が述作された『立正安国論』やその他の書物等で問いただし上申したところであって、その内容はすべて合致しています。
 ですから、一刻も早く爾前迹門の謗法を対治し、法華本門の正法を立てられるならば、世の中は安穏に治まり、国土は安全となるでしょう。世のため、法のために、私日興は重ねて申し上げた次第です。
  元徳2年3月   日興



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