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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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岡山県岡山市北区津高781番地 妙霑寺内

元 伯 と 巨 卿

 昔、中国に張元伯(ちょうげんぱく)という人がいて、范巨卿(はんきょこう)と友達であった。ある時、巨卿は長安に向かうため元伯と別れることになり、「私は上蔡(じょうさい)県(今の河南省の汝南県)に帰るから、君は九月九日、我が家に来て待っていてほしい」と約束して別れた。九月九日になると巨卿は鶏を殺し、黍米飯(きびめし)を炊いて待っていた。母はその様子を見て「どういう理由があってそうしているのか」と尋ねた。巨卿は「元伯と今日、会う約束をしたのです」と答えた。すると母は「千里も離れている所にいるのだから間に合わないだろう」と言った。巨卿は「彼は約束を破りません」と言うと、すぐに元伯が現れたのであった。
 後に巨卿が重病となり、死ぬ寸前に母に「私が死んだら元伯が来るまで埋めないでほしい」と頼んだ。母は「千里も離れているから誰も元伯の所まで知らせに行くことはできない」と言うと、巨卿は「自分で知らせます」と言い残して死んでしまった。その夜、夢に託して元伯に「我は今死んだ。君の手で私を埋めてほしい。私の屍を起こしてくれ。君と共に今生の別れをしたい」と告げた。元伯は驚いて目を覚さまし、「我が友の巨卿が死んだ」と声を上げて泣き悲しんだ。元伯はすぐに白馬に乗り巨卿の所に向かったのである。
 一方、いまだ元伯は到着していなかったが、親類どもは巨卿の遺体を運んで墓の下に埋めようとしていた。数人の人が棺をかつぎ上げたが、あえて墓に入ろうとはしなかった。そのため郷人はこれを怪しんだ。母は「息子が死ぬ時は元伯が来るのを待って埋めよと言っていた」と説明すると、ある者は嘆いて「誰が知らせることができるか」と言った。母は「息子が自分で知らせると言っていた」と言った。すると須臾に西より白馬に乗って泣き泣き近付く人がいた。思ったとおり元伯であった。元伯は馬からおり棺に伏して泣きじゃくり、やがて棺を三回巡めぐり、綱をとって引き墓に入れた。棺は多くの人の手を借りずにするっと穴に入ったのであった。
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 これは『註千字文』にある説話で、日寛上人は「外典のわずかな者でさえ妄語せず約束を守るのである。況や如来においては決して妄語がない」と言われ、さらに「末代に一字一句を説く罪福は仏在世より重く、他宗は常に真実の法を毀り、当宗は常に供養しているから、その罪福は歴然としている」と仰せである。
     (新説結座説法)


 
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