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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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岡山県岡山市北区津高781番地 妙霑寺内

梵志の還著於本人

 ある山中に一人の清信士(三帰五戒を受けた男性の在俗信者)がいて、五戒を持ち精進して、けっしてむやみに生き物を殺さなかった。この人は年を重ね老衰して物忘れがひどくなった。
 そんな時、山中に空腹の梵志が来て食物を乞うたが、この人は非常に忙しく、かまっていられなかった。ついに梵志は空腹のまま男を恨んで山を去っていった。梵志は尸(しかばね:死体)を起こして鬼とし、殺鬼を召得して鬼に「あの者は我れを辱あなどった。往いて彼を殺せ」と命じた。
 ところが同じ山中に羅漢(小乗の比丘)がいてこのことを知り、男に身を守る術を教授した。「汝、今夜は早くから灯を燃し、三自帰(仏法僧の三宝に帰依すること)を勤め、口に『守口摂意身莫犯』の偈を誦し、衆生を慈念し安穏になるようにしなさい」と言い終わって家を去った。男は言われたとおりに明け方まで仏を念じ偈を誦した。鬼もまた明け方までわずかな尤(とが)を求めて機会をうかがっていたが、男の慈心をみて全く害をなすことができなかった。
 鬼神は人に殺害を命じられれば実行しょうとするのであるが、ただこの男には不可殺の徳があるので、かえって鬼を使う梵志を殺そうとするのである。鬼は恚(いか)って梵志を殺害せんとしたが、羅漢はこれをかばい、鬼に見えないように蔽(かく)した。
 これにより男は道を悟り、梵志は活きのびた。男の心からの三宝への帰依は一門の命をながらえることになった。だから人が正念であれば鬼はけっして入り込めないのである。
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 これは譬喩経に説かれていて『弘決』に引用されている。日寛上人はこれを「還著(げんじゃく)於本人」と言われ、さらに「小乗の人が仏を念ずる正念でも鬼は入り込めないのであるから、まして南無妙法蓮華経を念ずる正念の者にはなおさら入り込めない」と仰せである。
     (歴代法主全書四巻)


 
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