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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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岡山県岡山市北区津高781番地 妙霑寺内

毒 意

 昔、天竺の摩訶陀国の王舎城中に悪意という名の一人の旃陀羅がいた。悪意には子供がいて、その子が生まれるとき毒が家に降ったので毒意という名がつけられた。毒意は成人すると訳もなく生き物を殺し、酒肉に耽ふけり、強盗を重ねるのであった。
 ある夜、僧房を通ると、比丘が法華経譬喩品の奥偈を誦し、その義を解釈している声が聞こえたが、気にも止めずそのまま家路についた。ほどなくして毒意は鬼病にあい、吐血して死んだ。彼の父母はその遺骸を墓場に捨てたが、狐、虎、山犬、狼もあえて毒意の肉だけは食べなかった。死して七日後、毒意は生まれ変わり、墓場で泣いていた。親友が来てその訳を聞くが答えなかった。時に両親が不憫に思い引き取りに行ったが、その姿を見るや「妖媚なり」と言ってそのまま放置して帰ってしまた。
 また、ある一人の沙門が墓場に行き、その不浄なるを見、次に毒意を見て「汝はなぜ鬼媚なのか」「なぜ悲泣するのか」と問うた。毒意は答えて「私は王舎城に住む旃陀羅の悪意を父にもつ子供で、毒意といいます。頑愚で因果も知りませんし、専ら殺生を業なりとしています。私が死んだとき、八人の夜叉が私を駆り立てて火車に入れ、口から火炎を吐き『汝は閻浮に比類のない悪人だ、悪果を忍べるか』と一々に呵責しました。そのとき五体が焼け折れ、譬えようのない苦痛が走りました。たまたま大城に到ると閻魔王が一人一人の罪の軽重を吟味していました。魔王は私を呵責して『汝は宿業によって旃陀羅に生まれたのであり、重罪を犯した報いは計り知れないものがある』と言いました。時に道人が魔王に『今此の三界は皆是れ我が有うなり、唯だ我れ一人のみ能く救護を為す』と言い、また『毒意は法華を聞法していて、その罪は軽いのだから地上に生返してやりなさい』と言い、道人は帰路を教えてくださり、私は七日の内に蘇生することができました。すると親族が墓場に来て、私が悲泣している訳を聞きましたが、彼等は全員悪友だったのです。どうか私を沙門にしてください」と懇願するのであった。
 出家を許された沙弥毒意は修行に精進するのであった。これを聞いた親族一同はみな発心し仏道を行じたのである。
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 これは日寛上人が中国の法華伝記をもとに「唯我一人」の例証として引用されたものであるが『法華伝記』には法華経の聞法功徳が示されていて日寛上人は「何に況んや信心にこれを聞かんをや」と仰せになり、信心をもとに聞法する功徳は更に深大なことを説かれているのである。
     (主師親抄・歴代法主全書4-137頁)


 
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