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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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岡山県岡山市北区津高781番地 妙霑寺内

諸宗破折ガイド 倶舎宗

4 倶舎宗
【沿革】
 倶舎宗は、『倶舍論』を拠り所として仏教教理を研学する学問宗派であり、成実宗・三論宗とともに「論宗」とも呼ばれた。論宗とは、経・律・論の三蔵のうち、論蔵を基にした宗派である。
 『倶舎論』は、正式には『阿毘達磨倶舎論(あびだるまくしゃろん)』といい、小乗の『阿毘達磨発智論(あびだるまほっちろん)』の注釈書である『大毘婆沙論(だいびばしゃろん)』の教理をインドの世親菩薩が組織的にまとめたものである。『倶舎論』は、中国では陳の文帝の天嘉5(564)年、真諦三蔵によって訳出され、次いで唐の高宗の永徽(えいき)5(654)年に、玄奘三蔵によって新訳された。以後、『倶舎論』の研究は、真諦系と玄奘系との二系統に分かれたが、次第に玄奘の系統が盛んとなった。
 日本へは法相宗とともに玄奘の系統が伝えられたが、これには法相宗と同様、南寺伝(元興寺伝)と北寺伝(興福寺伝)との二伝がある。天平勝宝3(751)年ごろ、倶舍宗として一宗派を形成したが、延暦25(806)年以後は、法相宗の寓宗(ぐうしゅう)(独立せず他宗に寄寓(きぐう)する宗派)となっている。

【教義の概要】
『倶舎論』では、一切の存在を構成する要素を指して「法(達磨(だるま))」と呼び、この「法」の離合集散によって、自己及びあらゆる現象界が成立していると説く。そしてこの諸法を色法、心所法、不相応行法、無為法の五位に分け、さらにそれを75法に細別し、これによって輪回の世界を説明している。この「法」によって構成される現象界の事物は、すべて無常であり無我であるが、その「法」自体は実有であると説いている。このように、一切は実有であると説く人々を「説一切有部」と称した。
 倶舎宗の教理は、「用滅説」と「体滅説」に大別することができる。「用滅説」とは南寺伝で主張されるもので、諸法はその実体が生滅するのではなく作用が滅するのであって、実体は三世にわたって実有であるとする説である。これに対して「体滅説」とは、北寺伝で主張されるもので、諸法は縁によって生じ刹那刹那にその実体は滅亡するという説である。

【修証論】
 倶舎宗では、煩悩を断じ悟りを得る観法として「四諦一六現観」を説き、これによって小乗の極果である阿羅漢果の位に至るとしている。
 四諦とは、苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)という四つの真理のことで、釈尊が最初の説法で説いたものといわれている。
一、苦諦とは、迷いのこの世はすべてが苦であるということ。(迷いの果)
二、集諦の集とは招集の意をいい、苦諦である迷界の果報を招く因と縁のことで、煩悩と説かれる。(迷いの因)
三、滅諦とは、一切の煩悩が滅尽した状態をいい、涅槃の境地に入ること。(悟りの果)
四、道諦とは、涅槃(滅諦)に至るための修行をいい、八正道の実践。(悟りの因)
 また「四諦一六現観」の現観とは、見道の位において無漏智(煩悩を離れた智慧)によって四諦の理を観ずることをいう。説一切有部の修証論によれば、修行者は見道位において、欲界の四諦を観ずる智(法智)と、色界、無色界の四諦を観ずる智(類智)をもって現観するとされるが、この二つの智にそれぞれ「忍」と「智」があり、智慧を生ずる因としての八忍と、見道の位で得られる無漏智としての八智を合わせて一六心となり、これをもって四諦の理を観ずることから「四諦一六現観」というのである。

【破折の要点】
◆倶舎宗では、現象界は無常・無我であるがそれを構成する法自体は実有であると説くが、これは釈尊が外道の考えを破すために説いた初歩的な仏教教理である。法の実有に固執すれば、仏教の基本理念である諸法無我の原理に背くことになる。この実有思想を破折したのが一切皆空を説く大乗の教えである。大乗の中でも『法華経』には、空・仮・中の三諦円融をもって諸法の実相を説き明かしている。したがって倶舎宗の教義は諸法の一面のみを明かしたもので、『法華経』に説かれる教えと比べてはるかに低い教えである。

◆倶舎宗はあくまでも小乗の教えによって立てられた宗派で、説かれる修行も歴劫修行である。たとえ修行の末に悟りを得たとしても、それは小乗の極果である阿羅漢果の位でしかなく、『法華経』に説かれる即身成仏の義にはまったく及ばない。

◆倶舎宗は、平安時代のはじめには法相宗の寓宗(ぐうしゅう)(他の宗派に付属し寄寓する)となり、現代では宗名が残っているだけで宗団自体も存在しない。


 
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