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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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岡山県岡山市北区津高781番地 妙霑寺内

諸宗破折ガイド 成実宗

5 成実宗
【沿革】
 成実宗は、インドの訶梨跋摩(かりばつま)の『成実論(じょうじつろん)』を拠り所として中国に興った学問宗派である。
 『成実論』は羅什三蔵によって訳出され、羅什門下の僧叡・僧導等によって弘められたが、天台大師や三論宗の嘉祥大師吉蔵によって小乗論と断定されてからは衰退の一途をたどった。
 日本には、天武天皇の時代に来朝した百済の僧道蔵によって伝えられたが、教勢は振るわず、東大寺、元興寺、大安寺、西大寺、法隆寺などで三論宗に付随して研学されるに過ぎなかった。延暦25(806)年以後は、三論宗の寓宗(ぐうしゅう)(宗教として独立せず、他宗に寄寓する宗派・附宗ともいう)となっている。

【教義と修証論】
 『成実論』とは、「真実を成就する論」の意で、部派仏教(小乗仏教)内の諸学派のかたよった見解を整理統合し、四諦の意義を明かすことによって仏教の真実を表そうとしたものである。
 『成実論』では、倶舍宗と同様に諸法を五位に大別し、さらにそれを84法に細別して説き、さらに苦の原因となる業と煩悩について詳説して苦諦、集諦を解明している。
 また、滅諦については、仮名心(けみょうしん)、法心(ほうしん)、空心(くうしん)という三種の心を説き、これを滅することが涅槃を得るための実践であるとしている。
一、仮名心とは、仮(か)りのものを実在すると考える心で凡夫の心をいう。真理のうえからみればこれらはすべて仮(け)であるから「仮名心」という。仏の教えによってことごとく苦・空・無常・無我であることを知ってこの心を滅しなければならないとしている。
二、法心とは、要素的な存在そのものを認める心をいう。すなわち、我々の心身は色・受・想・行・識の五蘊仮和合であり、実有としての我(定まった性質)はないと知っても、五蘊そのものの存在を認める心が残ることを「法心」という。
三、空心とは、一切諸法すべては空無であると考える心をいう。法心の滅によってすべてが空に帰することでは、まだ一切は空であるという考え方が残ることとなり、そこで空にとらわれた心を滅して涅槃を得ることをいう。
 この三種の心を滅する具体的な方法として、27の修行の階位を設け、析空観(しゃっくうかん)によって空理を悟り涅槃に至ることを説いている。析空観とは析色入空観(しゃくしきにっくうかん)の略で、諸法を徹底的に分析すれば、すべてが因縁仮和合のものに過ぎず、定まったものは何もない、という空諦を悟る観法をいう。
 最後の道諦については、苦を滅し悟りを実現するために禅定と智慧を説き、智慧のなかでも特に空と無我を悟る「真智」を強調している。
 このように成実宗では、我々の心身は色・受・想・行・識の五蘊の仮和合であり、実有としての我はないという我空と、その五蘊の法も実体があるものではなく、因縁和合のものに過ぎないとする法空の二空を立て、析空観によって一切諸法はすべてが空であると達観し、そのうえに四諦の理を得ることを説いている。

【破折の要点】
◆成実宗も倶舎宗と同様に、小乗の教えをもとに成立した宗派であり、我法の二空を立てるが析空観によって悟る空理は小乗の「但空」に過ぎない。諸法の真実の相は空・仮・中の三諦が円融しているもので、それを説き明かしたのが『法華経』である。『成実論』も『倶舎論』と同様に、仏教の基礎的な教理を説いたものに過ぎず、末法の衆生を救う教えとはならない。
 また、修行の面でも27の階位に基づいた歴劫修行であり、悟りに至ったとしてもそれは小乗の極果である阿羅漢果にとどまるものである。

◆成実宗も伝来当時は仏教の基礎学として講学されたが、平安初期に三論宗の附宗(ふしゅう)(他の宗派に付属し寄寓する)となり、現在では宗名のみで宗団自体は存在していない。


 
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