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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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諸宗破折ガイド 世界の宗教 ユダヤ教

第六章 世界の宗教
 現在、世界のさまざまな宗教が我が国に流入しているが、世界各地で起きている紛争等は、それら宗教と大きく関わっており、我々は世界の宗教に無関心でいるわけにはいかない。
 本章では、キリスト教・イスラム教をはじめとする世界的規模で広まっているもの、アジア地域のもの、仏教と関わりのあるものをとり挙げ、世界の宗教事情の一端を理解できるよう心がけた。
 本来、個人を救済し、国家の安定をもたらす宗教が狂気や暴力の源泉となったことは歴史の示すところである。これは宗教自体に欠陥があるか、あるいは人間の心を善導できない宗教の限界を示すものであろう。
 日蓮大聖人の仏法は、個人の幸福と社会の安寧と繁栄を築く根源である。我々は真実の妙法に依らなければ真の幸福と平和は絶対に到来しないことを広く知らしめていかなければならない。
 なお、本章では人口・信徒数は概数に留め、教義上の破折は実状を考慮して省略した

一 ユダヤ教

【歴史と現状】
 ユダヤ教は、ユダヤ民族(ユダヤ人)の生活を根本から規定している宗教であり、キリスト教の母体となった教えである。
 民族的にセム族に属する遊牧民のイスラエル人が地中海東岸に定住したのは、紀元前18世紀ごろであるが、ユダヤの伝承では、ユダヤ教は紀元前20世紀ごろ、アブラハムが神との約束によりカナン(現在のイスラエル)の地を与えられたことからはじまるとしている。その後、アブラハムの孫ヤコブとその一族は飢饉に襲われてエジプトに逃れるが、奴隷として苦役に従事させられる。
 紀元前1230年ごろ、モーセ(モーゼ)に導かれたユダヤ人は、苦難のエジプトを脱出して、パレスチナに帰る途中、エジプトの東、シナイ半島のシナイ山で、モーセは唯一神ヤーウェ(YHWH・ヤハウエ=旧約聖書の天地創造の神)からの啓示を受け、聖なる民となる契約を結び、のちの律法(トーラー)の基礎となる十戒を授けられたとする。
 紀元前10世紀ごろ、ダビデ王とその子ソロモン王によって、イスラエルに最初の神殿が建設された。しかし、ソロモンの死後反乱が起こり、北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂する。イスラエルは紀元前722年にアッシリア軍に滅ぼされ、紀元前568年にユダ王国もバビロニア帝国によって亡ぼされ、イスラエルの民はバビロニアに捕囚として移住させられた。その後、ペルシア帝国がバビロニア帝国を亡ぼしたため、イスラエルの民は帰国を許され、紀元前515年、エルサレムに再び神殿を建設した。これは第二神殿と呼ばれ、通常ユダヤ教といわれる形態が成立したのはこのときである。
 自分たちの国が、バビロニア帝国に滅ぼされたのは律法を守らなかったためであると考えたユダヤ人は、唯一神ヤーウェヘの信仰と律法への忠誠を誓う宗教国家を、この神殿を中心に作った。
 その後、紀元前1世紀ごろまでに、従来の伝承が成文化され、ユダヤ教にとって唯一の聖典『聖書(タナッハ)』ができあがった。
 紀元70年、ユダヤ民族は、パレスチナを統治していたローマ帝国に対して独立戦争を起こしたが戦いに敗れ、神殿は徹底的に破壊され、ユダヤ人はパレスチナの地に立ち入ることを禁止された。イスラエルの地を追われたユダヤ人は離散の民(ディアスポラ)となって、ヨーロッパを中心とする各地に分散した。
 中世、近世には、ユダヤ人に対して多くの迫害があった。ユダヤ人はイギリス・フランス・ドイツ等の国々から身分・職業・財産等で規制され、キリスト教徒からは憎しみをもって見られていた。そして、十字軍によって多くのユダヤ人が殺された。
 19世紀の終わりごろ、帝政ロシア末期の混乱に乗じてユダヤ人を無差別殺戮するというポグロムの動きが広がり、多くのユダヤ人がアメリカに移住した。このような迫害のなかでも、ユダヤ人はそれぞれの居住地に会堂(シナゴーグ)を建て、律法と註釈書『タルムード』を学び、信仰を守り続けた。離散の民となってから1800年以上自分たちの国を持てずにいながら、ユダヤ民族としての意識を持ち続けることができたのはこのためと考えられている。
 同じ19世紀末、ヨーロッパのユダヤ人から、ユダヤ教典に書かれた父祖以来の約束の地シオン(エルサレムの古い別称)に帰ろうとするシオニズム運動が起こった。
 第二次世界大戦中、ナチス・ドイツは600万人のユダヤ人を大量虐殺(ホロコースト)したが、戦後の1947年、国連総会においてアラブとユダヤの分離案が承認され、1948年パレスチナの地にユダヤ人によるイスラエルが建国された。しかし、ユダヤ教による国家の基本的性格に対する周辺アラブ諸国との意見の違いや土地の領有権をめぐる問題などで争いが絶えない。
 現在、イスラエルに360万人、アメリカでは600万人、その他ヨーロッパ諸国に300万人のユダヤ教徒がいる。

【教義の概要】
 ユダヤ教の教典は、律法(トーラー)・預言書(ネビイム)・諸書(ケトビム)の3部からなり、それぞれの頭文字から『タナッハ』とよばれるヘブライ語の書で、キリスト教では『旧約聖書』と呼んでいる。これには、神話・伝説・歴史・戒律・預言・詩歌・文学・箴言・黙示書などが記されている。特に重要視される律法は「モーセ五書」とも呼ばれ、『創世記』『出エジプト記』『レビ記』『民数記』『申命記』からなっている。
 この律法を時代に適用させるため、口伝で伝承された注釈をラビ(律法学者)たちが編集したものを『ミシュナー』といい、『ミシュナー』の解釈を集めたものを『ゲマラ』という。また、『ミシュナー』と『ゲマラ』を集大成したものを『タルムード』という。
 この『タルムード』は、パレスチナにおいて4世紀末に、バビロニアにおいて6世紀に成立した。現在は『バビロニア・タルムード』が用いられているが、その分量は、20巻、250万語にも及んでいる。
 ユダヤ教の神ヤーウェは、唯一絶対、全知全能、天地創造の主で万物を生かし、歴史を導く神であるとし、この神は彼らの先祖アブラハムをとおして存在を示し、モーセを通じて、ユダヤの民に律法を与えたという。したがって、ユダヤの民は神から選ばれた民(選民)であり、律法を守ることによって、地上に正義と公正を基とした平和な世界が実現できるとし、この遵守すべき律法は、戒律として613(義務248、禁止事項365)あるとする。
 律法の根底にあるのは、神の義は愛であるということである。罪人を罰する場合も、信頼の回復を真の目的とし、「目には目を、歯には歯を」ということも、報復を意味するのではなく、償いの行為として説いている。
 ユダヤ教では、神は目に見えない存在であるとして、偶像崇拝を厳しく排斥する。ヤーウェ或いはヤハウェとの神の呼称も十戒に「神の名をみだりに口にするな」とあるところから、文字のみが残り正式な読み方はわからなくなっている。
 律法の規定によると、金曜日の日没から土曜日の夕までを「安息日」とし、日常の仕事をすることが禁止されている。
 男子は生後8日目に、肉体的に一生消えないユダヤ人たるしるしを受ける儀式(割礼)がある。また、13歳になるとヘブライ語で律法を読む「バル・ミツバ」(戒律の子)という儀式があり、これによってユダヤの共同体に入ることが認められる。
 飲食については、選民の身分を守るための戒律として、浄、不浄が厳しく定められている。魚類は鱗のある魚に限られ、ウナギ、エビ、カニ、貝類などは食べることが禁止されている。豚肉は不浄として食べず、羊や牛の肉は食べてもよいが、血をすべて抜き取ったものでなければならない。また、肉類と乳製品の食べ合わせは禁じられている。
 これらの律法を遵守することについて、古来のままでは現実への対応に不便をきたし、18世紀ごろから律法の文を守ることのみに執着する姿勢に対する批判が起こりはじめ、律法の解釈に違いも生じてきた。その結果、律法を唯一絶対の指針とし、律法を文字どおり遵守すべきであると主張する正統派に対し、倫理的戒律は守るが、生活的戒律は精神的受容にとどめ、土曜の安息日や食物の禁止事項など実践不可能なものは拒否すると主張する改革派、さらに改革派と正統派の中間にあって、ユダヤの信仰と文化を守り、戒律の歴史的発展を主張する保守派などができた。
 現在、イスラエルでは正統派が主流であり、アメリカでは改革派と保守派が多数を占めている。


 
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