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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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諸宗破折ガイド 世界の宗教 ヒンドゥー教

五 ヒンドゥー教(バラモン)

【歴史と現状】
 「ヒンドゥー」とは、「インダス河流域の人々」を指すペルシア語であったが、のちに「インド人」を意味するようになった。したがって「ヒンドゥー教」とは、「インドの民族宗教」の意である。
 ヒンドゥー教は、インドにおいて、きわめて古くから信仰されてきた。しかも、単なる宗教を越えて、文化・生活・習俗などと一体になっており、インド教とも呼ばれている。
 紀元前20世紀前後、インダス河流域ではインダス文明が栄えていたが、紀元前15世紀ごろ、東ヨーロッパからアーリア人が西北インドに侵入し、先住の農耕民族を征服、支配した。アーリア人は、バラモン(司祭者)・クシャトリヤ(王侯・武人)・ヴァイシュヤ(庶民)・シュードラ(奉仕階級)の4つの絶対階級からなるカースト制度を敷いた。彼らの宗教をカースト最高階級のバラモン(婆羅門)が主祭する宗教ということで、「バラモン教」といった。このバラモン教は、祭祀中心で、寺院を持たない多神教であった。
 紀元前12世紀ごろ、バラモン教の聖典『リグ・ヴェーダ』が編まれた。以後、紀元前5世紀ごろまでに、さまざまな聖典や文献が編纂され、バラモン教は全盛時代を迎えた。このなかの、ウパニシャッド(奥義書)文献には、輪廻・解脱・業・梵我一如などが説かれており、のちの宗教・思想・哲学などに大きな影響を与えた。
 紀元前5世紀ごろから、社会体制が揺らぎはじめ、時間の経過とともに反バラモン教の仏教が勢力を強め、ジャイナ教なども起こった。これらの宗教に、王侯貴族や富豪の関心が移ったため、バラモン教は有力教徒を失っていった。
 このような動きのなかで、紀元前3世紀ごろ、バラモン教は土着の民俗宗教や俗習などと習合して大きく変貌し、ヒンドゥー教が成立、紀元1世紀ごろから、宗派ができはじめた。
 以後、8世紀ごろからインドで起こったタントリズム(密教)、13世紀以降のイスラム教のインド浸透、18世紀以降のキリスト教との接触など、さまざまな影響を受けながら現在のヒンドゥー教が形成された。19世紀には支配されていたイギリスに対する反英運動が起こり、20世紀にはガンジーを中心とするインド独立運動が起こったが、ヒンドゥー教はこうした動きとともに民衆に浸透し今日に至っている。
 以上のようなことから、ヒンドゥー教には、特定の開創者や体系化された教義は存在せず、その起源も明確でない。また、寺院は無数にあるが、統一的な組織も存在しない。
 ヒンドゥー教を信じる人は、インドでは人口の約8割の約7億人以上で、ほかにスリランカに人口の2割の280万人、インドネシアのバリ島に200万人がいる。また、ネパール王国では国教になっている。

【教義の概要】
〈三大神格〉
 ヒンドゥー教徒が崇拝する神の数は非常に多い。これはアーリア人がさまざまなものに神格を認めていたことともに、土着先住民の神を受け入れたことによる。
 これらの神のなかで、三大神格とされるのは、創造神のブラフマー、存続神のヴィシュヌ、破壊神のシヴァである。
 「ブラフマー」は、バラモン教の主神で、宇宙創造の神とされるが、現在は祀る人は少ない。
 「ヴィシュヌ」は、太陽を神格化したもので、世界の維持発展をつかさどる神として重要視されている。ヴィシュヌを最高神とする派をヴィシュヌ派というが、この派も、ヴィシュヌの化身であるクリシュナを崇拝するもの、同じく化身のラーマを崇拝するものなど、多数に分かれている。ヒンドゥー教では、釈尊もこのヴィシュヌの化身としている。
 「シヴァ」は、破壊、恩恵、生殖などの神として信仰されている。シヴァを主神とする派は、シヴァ派と呼ばれるが、この派も多くに分かれている。
ヴィシュヌ派、シヴァ派がヒンドゥー教の主流であるが、その他にシャクティ派、ナート派など多数の派がある。
 なお、吉祥天、大黒天、聖天、韋駄天などは、ヒンドゥー教の神が、仏教とともに日本に伝来したものである。

〈聖典〉
 ヒンドゥー教の聖典は非常に多いが、そのなかでもっとも古く根本とされるものが『ヴェーダ』である。これには『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』『アタルヴァ・ヴェーダ』の四種類があり、「天啓聖典」とも呼ばれる。
 これに次ぐ文献群には、『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』の二大叙事詩がある。また、『プラーナ』と呼ばれるヒンドゥー教に関する百科事典ともいうべき書や、法律的規定、宇宙創造説、通過儀礼、義務や贖罪などが書かれた法典などがある。法典のなかでは『マヌ法典』がよく知られている。
 ヒンドゥー教は、膨大な聖典に多くの教説が説かれている。そのなかには相反する理論や、一貫性を欠く内容があり、統一した教義はない。しかし、修行面においては、神像(偶像)を崇拝し供養をすることや、毎朝食事前に川や池で沐浴をし礼拝を行うなど、共通する点も多い。
 また、人は死んだ後、不滅の霊魂(アートマン)に付いた生前の業(カルマン)により新しい生を受け、輪廻を繰り返すとする。このため、この輪廻を断ち切り解脱することが、人生最高の目的であるとして、行為の道、知識の道、信愛の道の三つの道が説かれる。また、解脱のために苦行をおこなったり、ヨーガを行ったりする。
 生活態度としては、ダルマ(法)に従った生活を送ることが求められる。ダルマとは、習慣、義務などの意味で、行動の規範となるものである。これを実践するのに、生活期法と種姓法(すじょうほう)がある。
 生活期法は、シュードラ(奉仕階級)以外の男子の一生に課せられたものであり、幼年時代の聖典を学ぶ学生期、円満な家庭生活と祭祀を励行する家住(かじゅう)期、世俗を離れて森林に住む林住期、世俗の執着を捨て、各地を修行して歩く遊行(ゆぎょう)期の四住期があり、定められた年代に、決められたことを行うことが理想とされる。ただ、これは、今日ではほとんど実行されていない。
 種姓法は、過去の因によって今生の種姓が決まり、今生の因によって来世の種姓が決まるとする考えである。この結果、カーストが正当化され、その階層は、今日では3,000種にも及んでいる。


 
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