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日蓮正宗法華講 妙霑寺支部のサイトです。

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諸宗破折ガイド 世界の宗教 シク教

七 シク教(シーク教)

【歴史と現状】
 シク教は、16世紀はじめインドにおいて開かれた宗教で、ヒンドゥー教とイスラム教を批判的に統合したものである。
 シク教の「シク」とは「弟子」を表す言葉で、教徒はすべて「グル(教主)の忠実な弟子」であるというところからきている。
 開祖ナーナクは1469年に、西北インド、パンジャブ地方のヒンドゥー教を信じる小農の家に生まれた。この地方は、インドとイスラム圏の接点に当たるところで、ヒンドゥー教とイスラム教がはげしく対立している地域であった。
 ナーナクは結婚して2人の息子が生まれた後、30歳のころ霊感により啓示を受け出家した。その後、同郷の出身でイスラム教徒の吟遊詩人マルダーナとヒンドゥー教徒の農夫をつれて、修行者として方々を遍歴し、詩の形で教えを説いた。
 1520年ごろ遍歴をやめ、インダス河支流ラビー河右岸、カルタールブルに住んだ。ここで弟子たちを指導していたが、1538年に死去した。
その教えは、代々のグルに引き継がれ、第四代グルのラーム・ダースは、シク教の中心寺院である黄金寺院(ゴールデンテンプル)を建立した。また、それまで師から弟子に伝えられていたグルを世襲制にして、自分の子のアルジャンに第5代グルを譲った。
 このころから、シク教徒は社会的に独立した信仰共同体を作っていったが、イスラム教徒のムガール帝国との争いが激しくなり、グルや教徒が迫害によって死亡する事件が起きた。
 第10代のグルとなったゴーヴィンド・シングはムガール帝国の迫害に対抗するため、武力行使を決定し、シク教徒の男子に、頭文字にKがつくケーシ(長髪)、カンガー(櫛)、カッチ(短袴)、カラー(腕輪)、クリパーン(懐剣)の五Kを常に身につけること、頭にターバンを巻くこと、男子の名前の最後にシングをつけることなどを義務づけた。また、シク教の聖典『グラント・サーヒブ』を編集した。彼は1708年、ムガール帝国との戦いで戦死した。
 1799年、シク教徒はムガール帝国の圧政をはねかえして、ランジート・シングを中心にシク王国を建国し、パンジャブ地方を中心に一大勢力を築いた。
 シク王国は、19世紀中ごろ、イギリスのインド侵入に抵抗し、2度にわたって戦ったが敗れ、この戦いを最後にインドはイギリスの支配下に置かれた。
 第二次世界大戦後、インドがイギリスから独立したことにより、1980年代から90年代にかけて、シク教過激派はインド政府に対し独立を要求し、反政府運動を起こした。これはパンジャブ問題と呼ばれ、シク教徒によるインディラ・ガンジー首相暗殺にまで発展したが、しばらくして鎮圧された。
 シク教徒は進取の気性に富み、勤勉であるため、経済やスポーツなど、さまざまな分野で活躍している。
 現在、シク教徒は、インド北西部を中心に1,000万人、世界の各地に200万人いるとされる。

【教義の概要】
 シク教の最高神は「ハリ」といい、教徒は、これを唯一神として崇める。この神は、世界に遍満する永遠不変の真実(絶対真理)であり、衆生を真理に導く案内者であるとする。また、この神を崇め続けることによって、神との合一が遂げられると説き、ヒンドゥー教やイスラム教の神なども、この最高神によって創造されたものであるとしている。
 シク教の経典には、『アーディ・グラント』と『グラント・サーヒブ』がある。
 『アーディ・グラント』は、1604年に五代グルのアルジャンによって作成されたもので、ナーナクをはじめとする聖者たちの詩や讃歌などを集めたものである。すべて韻を踏んだ詩の本としては世界で一番長いもので、この書が置かれた場所は聖なる空間とされる。
 『グラント・サーヒブ』は、第10代グルのゴーヴィンドが、それまでのグルと自身の言葉を編纂したものである。彼はムガール帝国との戦いで、自身の後継者たる子供をすべて失った。その結果、グルの血統が絶えるため『グラント・サーヒブ』を後継のグルとするように教徒に遺言して、戦死した。このことから『グラント・サーヒブ』は『グル・グラント・サーヒブ』とも呼ばれ、重視されている。
 信仰の最終目的は、輪廻から解脱することであるとする。人間はそれぞれ霊魂(マン)をもっており、その霊魂はハウマイという自己中心の意識に支配されている。ハウマイは具体的には、カーム(欲望)、クロード(怒り)、ローブ(貪り)、モーフ(迷い)、ハンカール(自惚れ)という邪悪な感情であるとし、これが原因となって悪業を積みかさねるため、輪廻から脱却できないという。
 このような人が解脱するためには、ひたすら神に信愛の念を抱き、神の名を忘れることなく心にとどめることが必要であるとする。そのため、いつ、どこででも祈りを捧げることが大切であるが、特に朝夕に礼拝を行うべきであるとしている。
 シク教では、ヒンドゥー教の偶像崇拝や修行などを否定し、イスラム教の聖地巡礼、断食なども無意味であるとし、とくにヒンドゥー教の根幹であるカースト制度を否定し、神の前では人はすべて平等であるとし、いかなる職業をも軽蔑せず正直に精一杯働くことが、解脱を得るために欠かせない条件であるとする。


 
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